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研修ネットコラム

著:日本能率協会 KAIKAプロジェクト室 山崎賢司

掲げるだけでは浸透しない!ビジョンの「普段づかい」とは?

 「組織が皆、同じ価値観でないとダメだと思うのだが、当社が掲げているビジョン、経営理念がなかなか末端まで浸透していない。毎朝朝礼で唱和させているのだが・・・。」 このようなセリフは、多くの経営者から聞かれます。

 一体何のために?を突き詰めると、企業の「こうありたい姿」あるいは「社会に対して使命を果たす」といった、ビジョン・ミッションに行き着きます。 逆に、本来はビジョンやミッションを起点として、中長期の戦略、事業戦略などは一貫性をもち連鎖しているものです。 ビジョン・ミッションに基づき「何をやるか」を決めるのが戦略であり、「どのようにやるか」を決めるのが戦術となります。 そして企業単位から部門単位、課・チーム単位に分解されていきます。その実行に際して、行動指針・バリューを定める会社も多くあるでしょう。

 一方で、そんなにビジョンは重要なのか。あってもなくても、結果は変わらないのではないか、という素朴な疑問をもったことはないでしょうか? 確かに日常業務がある程度決まっていれば、ビジョンの有無によって行動はたいして変わらないかもしれません。 しかし、「ありたい姿」を本気で実現するには、ビジョンが日常行動まで影響力を持っているかどうかが、実は大きく左右してきます。

 実例として、あるスポーツの日本代表監督が、世界大会でベスト4に入るというビジョンを掲げました。 監督は、日頃から「その練習でベスト4にいけるのか」「その食事でベスト4にいけるのか」と問い続けたといいます。 うっとうしく思うメンバーもいたかもしれないが、次第に選手同士でも「その〇〇でベスト4いけるか」が冗談半分、本気半分でお互いに言い合うようになったそうです。 そうすると、何気ない行動をとるときにも、「これで本当にベスト4いけるだろうか」と自問自動するクセがつくようになります。 これが「ビジョンの普段づかい」です。どれだけ理念やビジョンを普段の思考や行動の中に溶け込ませ、使っているか。これは企業でも同じでしょう。 ビジョンを浸透させたいので「毎朝の朝礼で唱和する」というのも悪いことではないですが、それよりもビジョンを意識した日常行動が取られている組織の方が、 ビジョン実現の可能性を高く持っているといえるでしょう。

 ビジョンをどれだけありありとイメージし、自分事として捉えることができるかが、ビジョンの普段づかいを支えるうえで必要になってきます。 スポーツ選手の場合は、成果・結果が明瞭なので直接自分事になりやすいかもしれませんが、企業の場合、経営ビジョンと個々人の仕事の間に距離がある場合もあるでしょう。

 しかし、実は日常的にビジョンの普段づかいの機会は転がっています。たとえば自社紹介をする場面。名刺交換などの際に、簡単に自社紹介をすることがあるでしょう。 製品やサービスの紹介になりがちですが、他社との差別点を強調するときに、「我が社はこういう思いで創業しました」「我が社のサービスを使ってこういう世界が広がることを目指しています」 などと説明することはないでしょうか。ビジョン・ミッション、あるいはそれを形作ってきた会社の歴史がそこで語られることが多いものです。 これが実は自分の仕事と会社のビジョンをつなげるよい機会となっています。それに気づき、来客があると必ず現場を案内し、それぞれの現場の説明を、持ち場の社員に任せているという会社もあります。 外部の人に対し、自分の言葉で会社を語る機会があるだけで、自身の仕事と、会社のビジョン・組織の想いの“接点”がつくられるのです。

 本来ビジョンは、わくわくするものであり、イメージがありありと喚起されるものです。賛同するからこそ、自分の仕事を通じてそこに貢献したいと感じます。 そのエネルギーが、ビジョンを現実化に近づくことになります。ビジョンの普段づかいは、自分の仕事とビジョン実現との距離を近づけられるようになる一つの手段です。 ビジョンの普段づかいをどう実現するかという議論が始まることが、わくわくする未来をつくる組織となる一歩目かもしれません。



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